本年1月『五七五は命のリズム』を出版された橋本世紀男さんにお話をうかがいました。
Q ユニークな句集ですね
俳句だけを毎日一句ずつ一年間まとめた句集は珍しくありませんが、俳句と川柳の両方を載せた句集はないのでは? との素人考えで、なるべく前例のない句集をめざしました。1月1日から12月31日まで、毎日、俳句と川柳を一句ずつ掲載し、五七五の間は一字空けに。以前、俳句会で合同句集を発行した際、私の句は五七五の間を一字空けるよう依頼したところ、前例がないと断られ、ならばいずれ自費出版で実現しようと思っていました。
Q 大変ではなかったですか
川柳は割と自由に選べましたが、俳句はどの句をどの日にもってくるかが非常に悩ましいうえ、時事川柳は鮮度が命、やむを得ず割愛せざるを得ない句も多くありました。それでも『五七
五は命のリズム』というタイトル上、リズム感のある句に絞り込み、字余りの句は入賞・入選作品でも削除しました。
更に酷似句、類似句のチェックにかなりの時間と労力を費やし、疑わしい句は新しい句と入れ替える等、徹底しました。この作業が一番しんどかったです。
旅立ちは別れの地なり春惜しむ
Q 扉にはかわいい♡入りの書が一枚
これは親戚の橋本心花(10歳)の作。書道を学び始めて4年ですが、結構上手いのかいろいろな賞を受賞しており、ならば命のリズムは鼓動、心、この本に最適と思い、書いてもらいました。幼いながら、何枚も書き直してくれうれしかったですね。「心」という一文字のおかげで句集が生き生きと輝いたと思っています。
Q 俳句は昔から?
俳句を始めて10年近く。当初、銀行OBの句会に入ったこともありましたが、結社には入らず、でも独善的にならないよう、俳句の専門誌や俳句大会への投句など、他流試合を通して学んできました。俳句大会の作品集を見ながら「なぜ感動を覚えないこの句が特選に選ばれるのか? 自分の勉強が足りないからか」と、頭を悩ませるわけです。でもわからない、だから悔しい(笑)。そこで勉強するのですが、勉強したいことがあり過ぎて追いつかない。学べば学ぶほど俳句はわからない、だからこそ、続けているのかもしれません。投句を始めて7年間で入賞・入選句が220句を超えたこともあり、75歳の後期?高貴?いや単に頭部が光輝な高齢者(笑)の仲間入りしたのを機に、句集の編集に取り組みました。
蛍舞ふ恋の音符を紡ぎつつ
Q ご出身は宮崎とか
宮崎県の田舎で、兄弟や友人たちと裸足で走り回っていました。娯楽なんてない時代、先生の家から大人向けの文学全集を借りては、安吾も太宰も意味はわからなくても全部読みました。それが私の文学の原点かもしれません。数学は得意で、難問には数日かけて挑むことも。この時の経験が、その後社会人になり困難な状況に直面しても、粘り強く真正面から取り組めば「解はある。道は必ず拓ける」という自信となり、何事にも忍耐強くなりました。
Q 完成した本はいかがでしたか
立派な仕上がりに感激し、喜怒哀楽書房の皆さん、特に木戸さん、菅さんに感謝しながら愛飲の芋焼酎で祝杯をあげました。以前、東京の出版社から本を出したことがありますが、御社の丁寧な校正と心のこもった「お客さまファースト」の姿勢に、信頼感と安心感を覚えました。新潟よりも東京の出版社に頼んだ方が便利では?と思いがちですが、メールやファックス、郵便や宅配の活用で御社の方がはるかに適切な対応をしてくださり、友人・知人にも自信をもって勧めたいと思っています。
除夜の鐘喜怒哀楽の響きかな
Q これからは?
親戚、友人、知人に句集をお送りしたところ、想像以上の反響でご祝辞やお祝いの品をたくさん頂戴しました。次は俳句だけにして「梅」「桜」「雛」「燕」「蝶」「蛍」「月」「富士山」など、季題ごとにまとめようかなどと、次の句集の構想を温めています。調子に乗ってますかね(笑)。いずれにしても、俳句は心穏やかじゃないと詠めません。だから夫婦喧嘩をしないようにしているんです。じっと耐えてね(笑)。
傍目には夫婦円満俺が耐え
★お話の中で時折耳にした「悔しいんですよ、これが」に橋本さんの源泉を見た気がした。なぜできないか、悔しい、だからやる、ダメだったらなぜダメかを考えてまたやる、そしてより良くなって今がある。常にチャレンジ、常に成長。毎日の晩酌は地元都城の芋焼酎、黒霧こと黒霧島。「これが飲めなくなったら、俳句も詠めないと思います」の言葉に、大きくうなずくのでした。(木戸敦子)