本田 智惠子 様(東京都・清瀬市)

 

▲人も動物も引き寄せる本田さんスマイル

昨年八月、『人生の軌跡 ― 本田実・智惠子52年のあゆみ ―』を上梓した本田智惠子さん。紅葉が美しい季節を迎えた弥彦(新潟県)でお話をうかがいました。

Q 出版しようと思った経緯は?
昨年一月、夫である実さんの七回忌があり、私はなんて幸せな人生を主人に送らせてもらったのかなと思い当たりました。その後木戸さんと菅さんに出会い、何か書けるかなと思ったのが二月。私と実さんの52年の軌跡をご本にしていただけたらどんなに幸せかと思い、木戸さんにお電話しました。それから一気に書いて、六月の終わりには原稿が仕上がったんです。

Q 出版のお話から、原稿をいただくまでがとても早かったです。
書くことは好き。年代を追って思い出を書いていきました。主人も文章を書くのは得意でした。それぞれ勤めていた銀行の社内報に書いたものもとってありましたので、私の気持ちだけではなくて、主人の率直な気持ち、結婚してああでこうで…という思い出も一緒に載せていただきました。菩提寺に寄稿した文章等も入れ、早く仕上がりました。

Q この本にお二人の思い出がつまっています。
いろんなことを二人三脚でやってきました。私はそろばんが得意でしたので、主人の仕事の手伝いをしたり、趣味の野球もスコアをつけたり、ボール拾いをしたり。どこへ行くにも連れていかれましたね。だから、大変でしたけど(笑)。主人は私が家にいないのが嫌いな人で、縁あって飼うことになった九官鳥には私の留守中「遅いね遅いね」と話しかけていたようです。その九官鳥が可愛くてね。「あっしはねぇ」とか「ごめんください、ごめんください」と言ったり、こちらが面白いことを言うと「アハハハハ」と笑ったり。楽しい子なんです。

▲表紙はそれぞれ愛犬とのツーショット。智惠子さんは愛犬たちにストレスを与えないよう、平常心を保つようにしていたそう。

 

▲思い出の写真や手紙がちりばめられている。

Q 九官鳥のほかにもカメ、たくさんのワンちゃんを愛情をもって飼われたことが書かれています。
カメのふくちゃんは、主人と一緒のお布団で寝ていました。捨て犬も引き取ったりして、犬のアルバムだらけ。実さんも動物の気持ちがわかる人でした。あるとき車庫の前で水を撒いていたら大きな蜂が来て、普通の人だったら驚いて水をかけてしまうでしょうけれど、実さんは「おっ来たか、おいしい水飲ませてやるから、ちょっと待ってろ」と言って水を溜めてあげるような人。その蜂は水を飲んで、実さんの足の周りを三回まわってぴゅーっと飛んでいきました。

Q 優しいですね。
私が海水浴で日焼けし火ぶくれで苦しんだときは、一晩中寝ないで冷やし続けてくれました。それを見ていた私の母は「ああ、この人なら娘を任せて大丈夫」と思ったそうです。その母が入院したときは、一日も欠かさず見舞ってくれました。主人の親友が遠くの病院に入院したときは、私が運転をして毎週末三〇〇キロ往復してお見舞いをしました。そういうことで鍛えられましたから、今日新潟まで運転してきても疲れないのかしらね。

Q 昨年のご病気も克服されました。
いただいた命なので、少しは周りの方にいいことをしようと思って一生懸命。できるだけのことはさせていただいています。

Q 本をつくるうえで大変だったことは?
それは全然。上手に添削して直すところがあまりないようにしていただいたので、すごく楽しかったです。校正が3回来て、「これはこのように」と書けばその通りにしてくださるわけです。そして本が完成。嬉しいなんてものではありません、感激です。なにしろ子どもがいませんし、私がいなくなってしまったら、こんな夫婦がこの世の中にいたんだというのが分からなくなってしまうわけですよね。それだったら記念に皆さんのお手元に残していただけたらいいなと思ったんです。装丁から本文の体裁も本当に素敵にしていただいて、よかったと思っています。私にとってこの本は宝物。ご縁がなかったら出来ないわけですし。

Q これからは?
終活で身辺を片付けないといけないと思っているので、ものをつくったりするお稽古ではなく、勉強したりするほうをしたいですね。そして、ご縁を大切にして楽しんで人生を終えられたらと思います。

★「そのとき、こんなことがあったのよ」と笑った本田さんの表情が、新婚時代の写真と同じでした。その時やれるだけのことを精一杯やることが後悔しない秘訣、と教えてくださった本田さん。チャーミングな笑顔は生命力にあふれていました。(菅真理子)