杉山 悦郎 様 (新潟県・柏崎市)

sugiyama
▲目をキラキラさせながら想い出を語ってくださった杉山さん

杉山悦郎様 (新潟県・柏崎市)
  去る8月6日、映画を観るために、柏崎市から娘さんのいる新潟市に遊びにいらした杉山悦郎さま。3月にまとめた『外遊記』についてお話をうかがいました。
 

『外遊記』をまとめようと思ったきっかけは?

 過去の旅の記録は、その都度日記のような形で本にまとめていたが、どこかもの足りなさを感じていた。しみじみとした旅情、異国で感じるノスタルジア、他国の人と交わした友好、生活や宗教の違いなどを十分に言い尽くしたいと思うに至り、それらをまとめて記すことにした。タイミングとしては、年金があまり減らないうちにという思いもあったので(笑)。そしてこれは、最後の大仕事だと自分に言い聞かせて取りかかった。
 
まとめるのは大変だったのでは?
家族や縁者の協力や理解が得られたことが幸いし、特に大変だと思うことはなかった。孫の描いた挿絵や「はしがき」「あとがき」も家族全員が全面的に協力してくれ、ただただ感謝している。最初、写真を入れようと考えたが、自分の本であれば稚拙でも自らの絵を入れたいという道楽者の偏屈が働き、結局50点弱の挿絵を入れた。文字や文章の間違いは丁寧に直していただき、きれいな仕上りに大満足。自分としては後世に残る逸品であり、一緒に棺桶に入れてほしいと思っている。
 
ご自分で絵も?
前職は中学の英語教師だったが、貧しかったため日中は働いて高校、大学は夜学に通った。昔から絵と英語は得意だったが、建具屋で働いていたので、障子の枠を作るなど、そこでノコギリ、ノミ、カンナの使い方を覚え、木工工作も趣味に加わった。アメリカのヨセミテ公園でセコイヤの一種、レッドウッドを見た際には、これで何かを作りたい! といてもたってもいられなくなり、帰国してすぐにインターネットで入手し、宝石箱を作った。入れる宝石はないのにね(笑)。
 
旅のよさというと?
スペインの言葉にならないような満月の美しさ、ロシアのひどいホテル、機内で酸素マスクが下りてきたこと等、思い出は尽きないが、見知らぬ土地で見知らぬ文化に接し、見知らぬ人と心を開いて話をする。観るものはなくとも、そんな些細なことで満足できる。一つ言えるのは、旅を楽しくするもしないも、自身の心次第だということ。自分を耕すことが、旅を、人生を楽しくする秘訣かも。でも、私は一人では旅ができない(笑)。夫婦旅行は20回を超えるが、旅の準備万端は妻任せ。よくついてきてくれたと感謝あるのみ。
 
今、夢中になっていること
旅以外にも道楽があるものの、①木工工作、②絵、③読書、④陶芸(土いじり)の順といったところ。秋田を旅したら秋田杉、釧路では蝦夷松を土産として購入し、それらを材料に木工品を作り、旅がより一層思い出深いものになっている。旅はその場はもちろん、終えてからも文章にしたり、絵に描いたり、写真を楽しんだりと3回は楽しめる。読書に関しては、娘にインターネットで外国の本を取り寄せてもらい、これまた娘にプレゼントしてもらった電子辞書をひきひき読んでいる(笑)。
 
これからは?
まだ行っていないところに行ってみたい。アンコールワットをもう一度見たいし、万里の長城は海へ入る端っこがどうなっているのかも見届けたい。「あんたたちも、ついて来たかったら、連れてってやるよ!」(娘さんに向かって)。
 
『外遊記』より一部抜粋
〇息子さん「序文」より
「単純」なことがきっと親子のDNAなのだ。両親に言っておく、①生き方や考え方は単純でいこう。②でも、ボケない努力をせよ。③そのために、この旅行記を一つの通過点と考えて、次の海外旅行をめざしてほしい。
〇娘さん「父に捧ぐ」より
 退職後は好奇心の趣くままに旅をし、本を読み、工芸に親しみ、映画を観て、孫を愛し、達者に生きている。昭和のサクセスストーリーの具現者だ。敵うはずなどないのだ。願わくは、この先まだまだずっと、母と二人の旅行記が続きますように。いつまでも、私の息子たちの「憧れのジジ」でありますように。Have a nice trip.
〇妻 八十路まで生きながらえし幸せに旅の想い出語りつくさん
 
昭和50年、英語教師として2ヵ月かけて横断したアメリカへの英語研修に端を発した海外との出会い。81歳の今も、娘さんと月に1度か2度は映画を観に行くといい、当日は一緒に「ゴジラ」を見終えたばかり。「大変な読書家でグローバルな知識が豊富。映画の一シーンや一言のセリフで文化的・歴史的背景を察し、建造物や景色の一カットで、その空気感を掴める」とは娘さん評。シンプルで好奇心に従いまっすぐで、快活で。「腰巾着みたいなもんですわ」という奥さまとの末永い旅を、家族はもちろん、周囲の誰もが応援したくなる方だった。杉山さん、人生、三毛作、四毛作ですね! (木戸敦子)
 
▼『外遊記』の装丁はこちらからご覧ください
http://157.7.223.56/wp/sakuhin-misc/sakuhin-misc-1564/