本年1月、4年以上かけて共著で「弥彦・角田山系の樹木」をまとめた笹川薫さんにお話をお聞きしました。
【Q】 小さい頃から植物に興味が?
うちは農家だったので、よく田んぼの手伝いをさせられたが、自分で栽培した最初の記憶はサボテン。小遣いを出して祭りで買ったサボテンを、川原からちょうどいい大きさの石や砂を拾って用土とし、育てていた。自然と農業高校に進学したが、卒業時はちょうど減反政策が始まった頃。実務ではなく教える方、農業高校に勤務した。以来、転勤の時以外はずっと角田山の麓に住んでいる。あの辺りの小中学校の校歌は必ずといっていいほど角田・弥彦山が出てくるし、春・秋の遠足もみな角田山。山に行って栗や蓮の種を食べたりと、そんな環境だったから角田・弥彦山のことはよくわかる。白雲木は、弥彦山のテレビ塔のあたりに5~6本あるとかね。
【Q】 角田・弥彦山のストーカーみたいですね(笑)
弥彦・角田山系は、植物層がぶつかるところなので、植物の種類が豊富でどの季節も楽しめる。そんなこともあって、30代のころ知り合いが立ち上げた「弥彦山脈植物友の会」に入り、それまで以上に植物の名前を覚えるようになった。様々な植物を観察したり、写真を撮ったりしては、植物名を調べた。知らない、見たこともない植物があると、ぜひ知りたいという気持ちが湧いてくる。
【Q】 それが高じて今回の本を?
退職したら角田山の植物をまとめようと思っていたが、巻農業高校勤務の時に一緒に働いていた長島義介先生、荒川昭夫先生に「植物の本は多くあるが、木に特化した本はない。一緒にどう?」と声をかけていただき、あとはとんとん拍子で話が進んだ。
【Q】 でも完成に4年近くかかった
それぞれの木の全体(葉)、花、実の写真を網羅しようと自分たちで写真を撮り始めたが、花が撮れなかったり、実が撮れなかったり1年延長になった。平らなところに木が一本立っているわけではないので、撮影に思った以上に苦心した。高いところにある、上に葉が重なりその下に咲く木の花がなかなか撮れず4、5回通って撮ったことも。雨が降った日は、何の木の花が足りない等、写真の整理に充てた。毎週、私の休みの日に合わせて3人で車に乗り、撮影が終わるとランチをするというパターンで、あの3人はいったい何者なんだ? と思われていたかも(笑)。1年に40回行ったとしても、3年で100回は通ったと思う。
本の掲載に関しては、開花順を基本に、アカシデとイヌシデ、キタコブシとタムシバ等の似たような植物を比較できるように収録した。小学生でも読めるようルビをふり、葉の説明として対生は「枝に対して向かいあってつき(対生)」に、互生は「枝に対して互いちがいにつき(互生)」として、極力専門用語の使用は避けた。また、漢字で書くと覚えやすいという声も聞いたので「接骨木」、「木五倍子」の漢字表記も加えた。
【Q】 評判はいかがですか?
山に登る方はもちろん、登らない方も子どもに見せたいとか、これがそうなのか! 等、「樹木の次は山野草の本がほしい」と評判がいい。よく家を空けるので、家人の評判はよくないが、男はロマン、女は不満でしょうか(笑)。 山野草の種類は樹木の倍から4倍はあるので、死ぬまでにまとめられるかどうかわからないが、構想を練りつつもう撮影を始めている。
★相手を知りたいという気持ちは愛。植物への愛を皮切りに、それを知りたいという読者への愛と配慮が詰まった本書。3月27日、実際に笹川さんにご案内いただき、良寛さん縁の山、国上山に登った。常にニコニコ笑みをたたえ、懇切丁寧に説明くださり、私たち女性陣のたわいもないおしゃべりに時に声をたてて笑い、お優しいことこの上ない。この本のため、なかなかできなかったというもう一つの趣味はクロダイ釣り。どうしても50㎝オーバーを釣りたいが現在48㎝どまりとか。その2㎝に何の意味があるのかはわからないが、ロマンを求めて山野草の本の完成と50㎝の釣果、陰ながら応援しています。 (木戸敦子)