岡村 君枝 様(茨城県)・浅海 和代 様(東京都)

本年4月と5月、ほぼ同時進行で『句集 日向みち』と『句集 花のした』を上梓された岡村君枝さんと浅海和代さんにお話をお聞きしました。

【Q】 句集を出されたきっかけから
岡村…細々ながら俳句を始めて30年余り。先輩からもたくさん句集をいただき、いつかは自分の句集を…と思いながらも、日常の平凡な駄句を本にする意味を見いだせずにいた。所属する「炎帝」の鴻巣真木先生に相談したところ「人それぞれ。ぜひ君枝さんなりの句集を作って」と背中を押していただき、自分なりの句集を出す決意をした。
嫁に行った先の父は華道の家元で俳句も好き、置いてある本を読んでは俳句っていいものだなぁと思っていた。

岡村様
▲ほとんど日中はお留守の行動派岡村さん

浅海…俳句を始めたのは下の子が小学校に上がってから。和裁の他に一人でできることはないかと思ったとき俳句があった。もともと出掛けるのも喋るのも苦手。だって父は「くだらないことは喋るな!」という昔気質の人だったから、ようやく今、喋られるようになったの(笑)。最初はNHKの通信講座で俳画を学び始め、そのスクーリングで岡村さんと知りあい意気投合。今回岡村さんが句集をまとめると言うので、私も! と乗ったの。主人が存命の時、まとめてあげるからと言ってくれたのに、ついにやらず仕舞いだったから。

浅海様
▲月1回絵を教えている90歳の浅海さん

【Q】 NHKの通信講座ですか
浅海…一人で俳句を作っていてもだめだと思って。通信講座はよくできていて、1年間に提出する分の用紙が届いて、季題が出たり、回によって選をしてくださる先生を選べたり、飽きないように、でもしっかり上達するように工夫がされている。
岡村…そんなにお安くもないものね(笑)。毎年1月、NHKホールで開催される全国俳句大会には必ず参加しているが、大勢の人がいるのに「だいたい何時頃ね」というだけで不思議と浅海さんと会えるの。
浅海…誰と話すわけでもないけど、会場の雰囲気が楽しくて、また1年頑張ろうという気持ちになる。後日、放映もあって、その方がはっきりとよく見えるのにね(笑)。
【Q】 句集ができたときは?
浅海…うれしくてうれしくて、だからいつも袋に入れて持ち歩いているの。誰かに会ったらあげようと思って。
岡村…あんなにバラバラな原稿だったから、こんなにきれいにできて感激。よく完成したなと。

日向みち
▲題名の通り前向きで気持ちのいい句が多い

 

▲表紙カバーの桜の絵は浅海さん自身による
▲表紙カバーの桜の絵は浅海さん自身による

【Q】 周囲の反応はいかがですか
岡村…「炎帝」に入っているので、会の方からたくさんのお手紙をいただいた。下手なのに、皆さん絵を入れたのがとてもよかったと言ってくださる。
浅海…私はまだ、兄弟や親族に配っただけ。俳句や絵は門外漢だから反応もなにも「姉さんは高級だねぇ」とか。姪や甥には強制的に読ませたり(笑)。
岡村…この句集を出すまではとがんばってきたけど、これで一段落。最近は長時間立って動くこともつらくなってきて、先月フラダンスはやめた。
浅海…でも他にいろいろやっているじゃない。俳画、カラオケ、旅行、筋トレ、体操教室に…。
岡村…筋トレは週3回ペースで10年続いている。ほら、この辺は筋肉がついて固いわよ(笑)。何もしないで家にいたらTVを見るだけ、それは絶対だめだと思って。

【Q】 面倒だと思ったりすることは?
岡村…面倒? そんなこと考えたらだめよ。決まったところは行くの。
浅海…岡村さんの句集、装丁はやわらかい印象だけど、読むとそのどっしりとした骨太な生き方が出ている。私はふわふわしてダメ。
岡村…それじゃあ太っているみたいじゃない(笑)。18~23歳までは戦争で青春はなかった。すぐに働きに出て勉強なんてできなかったから、3番目の子どもが幼稚園に入った35歳のとき高校に入りなおした。卒業時のあの感激は忘れられない。今はもうおつりの人生。やりたいことを楽しみながらやらなきゃつまらない。
浅海…私もそう。もうおつり。先日、90歳で20本以上自分の歯があるということで表彰式に行ったら、100歳で20本ある方がいたのよ! 普通は90歳でおしまいでしょ、思わず笑っちゃった。できるところまでは、今教えている絵の教室を続けていきたい。

【Q】 これからは?
岡村…子どもや人のやっかいにならないよう、可能な限り自分でやりたい。子どもには「電話をかけて出なかったら死んだと思ってね」と言っている。時々顔を見せてくれれば、それで十分。
浅海…うちも時々、生存確認のために電話がくるけど、あまり喋られると「もうその話、終わった?」って言って切っちゃう。絵も描きたいのに、その間何もできないんだもの(笑)。

岡村君枝  
強霜に弱さは見せぬ花芽かな
限りある命の深さ青葉潮
日の恵みみな平等に日向ぼこ

岡村さん俳画
▲「俳句を道づれに暖かい温もりのある道を歩きたい」と岡村さん

 

浅海和代  
柩にて帰る妹終戦日
憂きことは風にまかせて揚雲雀
どんぐりの陽のぬくもりをポケットに

▲「9人兄弟だったから自然と童の絵が多くなる」と浅海さん
▲「9人兄弟だったから自然と童の絵が多くなる」と浅海さん

 

 

★からからと、常に笑いが絶えないお二人の会話は、失礼だがとても84歳と90歳のものとは思えない。聞けば、苦労は多々あれど、それらすべてを受け入れ、為すべきときに為すべきことをきっちりと果たしていらっしゃる。それぞれに伴侶をなくされて10年と20年。健康に留意し、常に自分を楽しませる依存しない自立した生き方は、友あればこそより強固に。骨太、ふわふわとも実にいい味を出しておられました。(木戸敦子)

 

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▲岡村さんに届いた、句集へのお手紙

 

無題
▲タイプは違えど深くご自身の生を謳歌しているお二人