久珠の会 一ツ橋句会(東京・武蔵野市)

久珠の会一ツ橋句会
主宰 水原亜矢子様
(東京都・武蔵野市)
 
 7月14日(月)夜7時、「学士会館」で開催された「久珠の会 一ツ橋句会」にお邪魔しました。話題になったドラマ「半沢直樹」のロケ地として使用された建物は、外装内装とも重厚な造り。主宰の水原さんは、中学生の時から伯父の水原秋桜子に俳句の手ほどきを受けていたという方。会の名前の由来である娘さん以外の女性は本日欠席ということで、全員仕事帰りという現役の男性揃い。さて、どんな句会になるのでしょうか。

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▲軽妙で楽しい語り口の中に俳句の大切なポイントを盛り込む水原主宰

 
本日の自由題「髪洗う」「冷奴」「金魚」ほか5句提出の5句選。仕事で遅れてきた方には「駆けつけ3杯」ならぬ「駆けつけ5句!」の声がかかり、「最後まで作者を明かさないで言いたいことをいいましょう」という会員の言葉を口火に、選句、披講へと続きます。
 
冷奴小言を添へる女箸     鹿彦
会員…奥さんが、また苦情を言っている情景が浮かんでいいと思った(笑)。
主宰…全員の点が入った6点句。冷奴を食べながら小言ばかり言っているということでしょうか。女箸は女の人の使う箸?この場合、上5と中7ができているから女箸でいいが、他で使えるかというとそうではない。今、冷奴のおいしい時季でありリアリティがある。
 
夜の更けて明日別るるか髪洗ふ     敏朗
主宰…明日こそ別れようと決心し、そのためにさっぱりしよう、と。でも、結局失敗して別れられないのでしょうね。抜き差しならぬというか、縁が深い。時間の経過が出ていておもしろい。これは敏朗さんのように、経験豊かな人じゃないと詠めない句。
会員…マンション住まいだと、夜遅くに風呂に入ると苦情がくる。これは一軒家の人の句だな(笑)。
 
髪洗ふ情事の火照り残しつつ        和男
会員…どんな顔でこんな句を出すのだろう。
主宰…顔で情事をするわけではないですからね。私の句ではありませんよ(笑)。
会員…情事というのは、一般的に夫婦間のことではないですよね?/それを言ったらおもしろくないでしょう。
主宰…結構点が入っているのは、想像できるし有り得そうということ。詠めそうで、でもみんな遠慮して詠まないことを、これだけはっきり詠む句は少ない。どなたの句?
作者…じゃあ私で(笑)。
主宰…じゃあって何。いやな会なので、これからは何年も「情事の人ね」って言われるかも(笑)。
 
もうわずか金魚と声を交わしたり    敏朗
主宰…金魚と声を交わすのはいいと思うが「もうわずか」はどういうこと?
作者…金魚売りが、金魚が売れそうだから、もうお別れということ。
主宰…「もうわずか」だけではわからない。「売られゆく金魚と声を交わしたり」が近いと思うが、売られる少し前を詠みたいわけでしょ?「売れるまで」だとちょっと悲しくなるし、次回までいい言葉を考えておきます。先ほどの「夜も更けて」の句とは趣きが違うようだが同じ作者。もう少し言葉を選る必要はあるが、この繊細な感覚を俳句に詠んでいくとよくなる。
 
心太佳人の箸につかまらず            鹿彦
主宰…発想にわざとらしさがなくおもしろい。ガサッとではなく上品に取ろうとするから、つるつるとつかめない。「美人」ではつまらないが、「佳人」という少し古い言葉を持ってきたところもうまい。この作者は、よくデートをしているのでしょうね。
作者…佳人は奥さん(笑)。
主宰…奥さんを家人ではなく佳人というところがすごい。
作者…作っている俳句を見られた時に困るから、アリバイ工作(笑)。
 
金魚鉢ひとつの宇宙の果ての果て    仁子
主宰…「果ての果て」がひっかかる。行って戻る、と違って、果ての果てだと行っちゃったまま。かっこはいいが、少し結論がないとそれでどうした、という句になる。掴んでいるものはいいが、言葉が足りない。
 
初デート金魚の視線面映し              仁子
主宰…この句にこんなに点が入る?金魚は外にいなくはないが、デートは外だし、金魚は中のもの。その辺がバラバラで未消化。「初デート」を代えて考えた方がいい。
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▲自由闊達な会の皆さま

 
話好き髪洗わるる間にも    堅二
会員…髪を洗っている間も話しかけてくる床屋の主人か、銭湯でのことか。一場面を切り取っていてユニーク。
主宰…話しかける店主と髪を洗われる作者がまざっている。店主を主語にするなら「話好き髪を洗いし間にも」となる。
 
金魚鉢ピアノソナタに漣 す     堅二
少し大げさだが、おもしろい。でもこれは「金魚鉢」じゃなくて「金魚飼う」でいい。「鉢」が問題なわけではなく、金魚がいてピアノソナタに揺れているという、全体像をとらえた方がいい。
会員…マンションだと、夜ピアノを弾くと張り紙をされる。
主宰…はいはい。マンションの人でも、一軒家のつもりで詠んでください(笑)。
 
◎他の作品
わだかまり解けて優しく髪洗ふ   久珠子
咲き零る小さき庭の百日紅              仁子
この話し切り出すべきか冷奴           敏朗
暮六つを片耳に聞く洗い髪              鹿彦
ツンとしてお肌色白冷奴       和男
猫の仔に金魚巨大や金魚玉              堅二
 
主宰…今日の特選はありませんが、季題3つが江戸趣味っぽく偏っていたかも。割と情緒のある句が多かったが、格段に差があるわけでも、うまいわけでもない。暑いけど、みなさん頑張りましょう!
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★主宰の「初心者が中心の賑やかで楽しい会よ」とのお話を受け、お邪魔した会。期待に違わず、おおらかで多少艶っぽくて…!ここ男性中心の会の他にも、吉祥寺句会、日比谷句会、そして新しい「俳句とフランス料理を味わう会」など、俳句を身近に楽しみながら学べる試みが用意されている。月1回の俳句とその後の懇親会は、働く男性のいっときのオアシスであり、俳句が日常のエンジンオイルとして作用していると感じた次第です。  (木戸敦子)
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▲「舶来のサングラス買い職を辞す」の句に、ほら「これだよ」とかけてくださった敏朗さん(二次会で)