セカンドの会 (東京都・大田区)

セカンドの会
 代表 布施徳子様
(東京都・大田区)
 
11月21日(金) 、東京・大森駅からバスで7分の「大田文化の森」にて行われた超結社「セカンドの会」の句会に、髙野公一さんのご紹介でお邪魔しました。会の大黒柱、布施徳子さんが体調不良で欠席なのが残念と、皆さん口々に。通常、その場で決めた5~6つの席題を一時間半で作句したのち句会となるが、本日は欠席者が多く、席題は7つに。
 
「7句もつくるとは大変だなぁ」と思いつつ準備をしていると「木戸さんも出してね」と、どこからか明るい声が降ってくる。ここで「無理です」と断ったら女がすたる、えーい、ままよ、と「冬」「霜」「海鼠」「杖」「指」「忘」「書」の7つの席題をクリアすべく、頭はフル稼働。
一方、皆さんは手慣れたもので、句を作りつつ発するコメントが秀逸。つい耳をそばだたせてしまう。「写真は載るの? 顔も俳句もダメ。声はいいんだけどね~」「欠席の人の写真、脇に載せてもらおうか」「すごくいい句ができた!きっと点は入らないけどね」「我ながら、よくこうもでたらめな句が作れるよね」「いいのよ、俳句は創作だから」。煮詰まってくると「誰か言葉くださーい」「えり子さん(本日欠席)のため息を聞かないと、リズムが崩れるわ。あの焦っているため息が聞こえると安心するのに」「もう、いろいろ入れて“海鼠食うわが霜降りも震わせる”とかどう?」。そして、早く句を作り終えた方には「できないと嘘つきながら集まりて」。ようやく、一時間半の大仕事を終えると「あぁ終わったー。あとは帰るだけね」と、舌先もペン先も緩めない。
 
口も滑らかなまま、句会開始。
これも旅ひとりで渡る冬の川        栄子
冬の川が意味深かどうか。出かけることが辛くなった、という程度のことかもしれない/私は三途の川だと思っていただいた/思わせぶりな句。これをいいととるかどうか。
作者…これは実景で、多摩川を電車で渡って帰ってきたときの句。三途の方にとられるだろうことは十分承知して作った。ダメですかね?
「ひとりで渡る」で「これも旅」だから、三途の方が強く出ちゃう。全部がいやらしい(笑)。
 
書き損じの稿を猫ふむ小春かな     京子
あたたかい光のなか、稿を踏む猫を見る作者のまなざし。幸せな景がよく見えた/私も採ったがこれは難点がなく、できちゃったなーという句。でもよくわかる/誉めてるのかけなしてるのかわからない(笑)/でも、上手。書き損じを踏んでいる猫もえらい。
作者…ありがとうございます。今日は猫にごちそうしないと!
 
霜月と書いて続かぬ恋の文            輝子
うまいよこれ、可笑しい。霜月もいい/格好つけて時候の挨拶を書いたが、その後が続かなかったということ。
作者…もっとほめて(笑)。三年生の孫が、習った「霜月」を使って日記を書き始めたが、続かなくて。そこから頂戴した。
 
4
 
 
 
 
 
 
 
 
 
着ぶくれて杖つくなんて赤い靴     栄子
謙虚なことを言っているようで、最後に赤い靴でどーんと自分を出している/私としたことが…という、作者の性格が見えるような明るく前向きな句/この方は、出好きなんでしょうね。
作者…はい、出好きの栄子です。
 
さよならは葉書一枚霜降りる        澄子
来たのか自分が書いたのかわからないが、いい句。まぁ葉書が来ただけいいわよね(笑)/「霜降りる」が、幕引きという意味ではわかるが「さよならは葉書一枚」で十分に言っているので、違う言葉でもいい/喪中のハガキかも。そうすると霜月でいい。
 
立身も出世もなくて霜柱               鉄哉
平凡に生きて、霜柱を黙然と見ているのかなぁと。立身出世していたら霜柱なんか気にならない人生だったかも。
 
忘年のふわりふわりと蛸の足        繁子
酔っぱらって、ふわふわする格好が蛸の足に見えたっていう…/えっ、これ千鳥足のこと? 水族館にいるミズダコなんて、まさにこの句のような動きをする。忘年も効いている/蛸の足のふわふわした感じと、何かあったようなないような、年を忘れるときの感じ、その辺の感覚がうまく捉えられている。忘年の句では、あまり見たことがない。
 
綿虫を抜けて旧約聖書かな            栄子
荒唐無稽なんだけど、旧約聖書が役割を果たしている/こういうのが栄子さんの句。
作者…私のつくり方として「書」だから漠然と今日は旧約聖書にしようと決め、旧約聖書のどこかを読んだことにしよう、と考える。大好きな季語「綿虫」の、とらえどころのない深くて広くてわけのわからない感じと、同じようにやはりよくわからない旧約聖書を引き合わせた。
 

無題1
▲いつも披講を担当するのはおしゃれな鉄哉さん

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
無題
▲本日、好調の京子さんは86歳

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
書き癖で彼と知れたる柿届く        輝子
きっと毎年送ってくるのでしょう。交友の深さがわかり、いいと思った/一般的な「母」ではなく、「彼」としたところがいい。幼なじみか、忘れられない初恋の人かもしれず。
 
海鼠笑ふ欠けたる歯では噛めまいぞ              京子
これ、海鼠が言ってるんでしょ? 「お前のような欠けた歯で俺を噛めないぞ」って。俳人は海鼠を上から見るけど、これは逆。海鼠の上から目線がおもしろい。
 
冬夕焼誰もがわかるカレーの香     繁子
誰もがカレーの香をわかる、その通りなんだけど、そんなことを俳句にする人はいない。おもしろいと思った。
作者…マンションだと、いろんな匂いがして「何を作ってんのかな?」と思ったりするが、カレーだけははっきりとわかる。
 
1修正
▲みなさん、充実したいい笑顔です

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
立冬の杖に好みの花模様               公一
「立冬」に、これからがんばるぞ、という気持ちが込められていていい。今は素敵な杖がいろいろある。
 
近づかぬ子は杖ならず枯葎            京子
ほんとそうだけど、身につまされ過ぎていやだね。この俳句を見たら、なおさら近づいてこないかも(笑)。
 
 
★超結社だけあって、枠を超えるがごとく縦横無尽に闊達に私見を述べる各メンバー。「欠席した人たち(他、吉田香津代さん、長久保通繪さん)が少数精鋭だから」と笑うが、いやはやどうして。今日、好調の京子さんは毎回ヘルパーさんの手を借りてこの会に参加。生死の境をさまよった時期もあったという栄子さんは「ここで死んだら、その後も澄子さんはいい俳句をつくるのか…と思ったら死ぬに死ねなかった」と笑う。生きがいがあること、そして支え合う仲間がいること。「人生七十古来稀なり」ならば、それらすべてを手中にしている皆さんはどれだけ稀な存在か。ますますの切磋琢磨を願って止みません。 (木戸敦子)
 
きぶし
▲句友でありライバルの栄子さん(左)と澄子さん