「歌集 ともしび」
なぜ「ともしび」をまとめられたのですか?
4年前、入院した際にたまたまご一緒した方が俳句をなさる方で、せっかくだから本にしなさいと、御社を薦めてくれました。思いもよらぬことでしたが、思い切って電話をし「原稿をお送りしていいですか」と聞くと「どうぞいいですよ」とのことで、退院して家に戻ると見本が届いていました。
本が完成した時の感想は?
ちょうど本を作っているときに娘を脳腫瘍で失いました。病床で「ばーば、本になるといいねぇ」と喜んでくれ、最初「灯火」としていたタイトルも、「ともしび」の方が柔らかくていいよ、アドバイスしてくれました。
これからはやりたいことは?
死にたいと思ったこともありましたが、私一人の命ではなく、神様がくださった命。いただいた分は、生きていかなければいけないと思えるようにしていただきました。この歳になっても、まだまだわからないことばかり。今まで当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではない、たぶんそういうことなのだと思います。
「歌集 ともしび」より
やりくりが下手なのかしらと夫に言ひ今月の赤字吾が手にて書く
置きて来し吾子想ひて甲府駅車出るづる時乳しぼりたり
しんしんと吾が身に透る雪あかり深夜勤務に今より行かむ
物見ゆるこのしあはせぞ盲ひたる人の心を深く思へば
重症の夫とは悲し幸せで在りしとつたふ君が手細く
戦争といふ名のもとに傷つきし四十年をおもひ涙こぼるる
『歌集 ともしび』 2010年6月
http://157.7.223.56/wp/sakuhin-tanka/sakuhin-tanka-901/