豊柳会
会長 佐藤良佐句様
(新潟市・北区)
1月25日(土)、新潟市から北に阿賀野川を越えたかつての豊栄市(現在新潟市北区)で、40年近くの歴史を持つという川柳会「豊柳会」にお邪魔しました。1月の句会のあとは新年会とあって、今日の会場は「割烹 町北幸」。昨年から入会した当社スタッフもいて、さてどんな句会が行われるのでしょう。
「もう少しの辛抱、やがて春がきます」という、明るさを感じる佐藤会長の挨拶に続き、宿題の入選句の発表、講評にうつります。
「誕生」盛田朴児 選
◎五客
五 誕生日確認される若づくり 良佐句
四 スター誕生過去をほじくる芸能誌 東二
三 えび腰の妻は一月誕生日 初枝
二 画像見て信じていいの男の子 としみ
一 お年玉額も弾んで初ひ孫 實
◎天地人
人 嗚呼子亀けなげに海へまっしぐら 富士子
地 早生まれハンデが背負うランドセル 東二
天 退職へ引導告げる誕生日 良佐句
選者吟 商魂に載せられ祝うバースデー 朴児
選者/秀句ばかりで、最後は自分の好みで選んでしまったこと、お許しください。
人…一斉に海をめざした子亀は、やがて成長し生まれた海岸へ戻ってきます。命をつなぐために。命の営みの不思議さと偉大さには言葉がありません。
地…幼いころの一年近い差は、かなり大きいようです。早生まれのハンディキャップを克服し頑張ってください!
天…「定年」という人生の句切りの誕生日は特別なものがあります。第二の人生が豊かな時間でありますよう、お祈りしています。
「目」山口東二 選
◎五客
五 絵手紙に春を見つけるやさしい目 はじめ
四 さりげなく愚痴聞く友の優しい目 富士子
三 字がぼけてメガネ無しでは暮らせない ゆり
二 老いの目にまぶしすぎます若い肌 朴児
一 仁王像ギョロリ一喝初詣で 實
◎天地人
人 料理人慣れた目利きで競り落とす ゆり
地 人間を見張る冷たいカメラの目 はじめ
天 ぬたならば今が旬だと鰯の目 實
選者吟 手を挙げて答えを知らぬ伏し目がち 東二
選者/人…一流の料理人が選りすぐりの食材で腕をふるう。きっと食通の舌をも唸らす至芸の料理ができあがることでしょう。
地…世界一安全な国といわれる日本。それを支えている物言わぬ監視カメラ。もし撤去されたなら、日ごろの安全、安心が脅かされることになるのでしょうか。
天…旬のものは、その時々においしくいただくのが食材に対する礼儀ですね。
「ゼロ」佐藤良佐句 選
◎五客
五 行き詰りゼロに戻ってもう一度 ゆり
四 ゼロ金利ハードル下げて生き延びる 友子
三 買い替えの愛車泣き出すゼロ査定 澄子
二 奔放に生きてふところいつもゼロ 一苦
一 一本の腕でゼロから成り上がる はじめ
◎天地人
人 標高がゼロで逃げ場のない平野 東二
地 プラス無しマイナスも無い心地良さ 富士子
天 残高ゼロどうにかなるさ楽天家 朴児
選者吟 ローン完済耐久ゼロも告げられる 良佐句
選者/人…3m以上の津波がきたら、まさに逃げ場はありません。対策としてはビル屋上の避難場所とはいうものの、高齢化と地域のコミュニケーションが問題です。
地…人生、プラスマイナスにストレスの元があるようですね。まさにゼロならと思うでしょう。
天…最高の生き方です。ゼロでも明日はあしたの風が吹く。ストレスゼロで元気です!
「自由吟」品田澄子選
◎五客
五 瀬戸際でするりと抜けた老いの知恵 初枝
四 寒風が低い鼻にも突きささる なつみ
三 二年詣り期待しないが虫さわぐ 志郎
二 美しい日本が右へ舵を切る はじめ
一 知恵袋借り物だった二言目 一苦
◎天地人
人 白鳥は国籍のない自由な身 富江
地 笑うこと知って人間らしくなる 朴児
天 一呼吸置けば場面が替る視野 良佐句
選者吟 命綱つけたか屋根のおじいさん 澄子
選者/新年らしい力作に、たくさん勉強させていただきありがとうございます。
人…人間が空を飛べるなら、あの北の国へも行けるのに。
地…心がけたい、笑うこと。人間らしくあるために。
天…深呼吸、すれば心眼に映ずるものもあるのでしょうね。
その後、平成25年度の年間賞、席題賞、皆勤賞に続いて、各人が用意したお年玉の景品とそれにちなんで詠んだ川柳から、何の景品かを当て交換するというお楽しみのコーナーです。
正月の五臓を癒す梅割りで 實
天ぷらに華を咲かせるプロの技 友子
バレンタイン祖母にも春が来たらしい 朴児
飴玉を口に遊ばせお茶を飲む 富江
恋の矢に媚薬を塗って射るハート 東二
ご飯の友にユリ根に似たる春の花 志郎
冷茶より冷酒なをよし夏は来る 一苦
好きな物甘辛問わず今のうち 良佐句
愛があるベンチに敷いた指定席 はじめ
ほうろくにコロコロ踊る母の味 富士子
寒い日は心身暖め春思う なつみ
もう一度手渡したいねときめいて ゆり
身をつくしあなたの体守りたい 澄子
チャンネルを変えて親父のさがしもの 初枝
★目の前に皆さんの句が書かれた用紙があるわけではなし、披講の声を、目を閉じて聞いている方、時折メモをする方と、実にさまざま。活字を見ない分、その句がわかりやすいか否かも含めて、耳に残る調べに集中できる。後日、句会報が配られるから後で当日の句の印象と比較することも可能だ。自分のペースでゆったりと楽しみながら、日常の些事から大局までをクスリ、グサリと17音にのせる。そして、サラダ油や漬物、石鹸、あられ、靴下の交換まで(笑)。新潟らしい土地柄を感じる、実のあるおおらかな会でした。 (木戸敦子)