ちゃい文々イラストエッセイ『あの日の唯一むにむに』出版に寄せて

ちゃい文々との出会いは、28年前のこと、今はNPO法人になっているある団体のトレーナー養成講座でだった。他の人とは一線を画すような、あまり自分には関わってくれるな、という一匹狼のようなオーラを醸し出していた。そして、やたら前のめりでやる気あふれる人だなぁ、というのが第一印象だった。

あとでわかったことだが、その時の彼女は離婚直後で小さな子ども二人を抱えて、なんとか食っていかなければならない状態だった。

そのときの印象どおり、以後の彼女は猪突猛進、一心不乱、寝ずに必死に仕事をしていたのだと思う。本来のイラストレーターの仕事のほかに新聞の連載、漫画エッセーの出版、講演会、ワークショップ、ラジオ出演と八面六臂の活躍。

そして、癌の告知、被災。眠れない夜が、そして自分をひたすら小さい存在だと感じた日々があったろう。だから今、小さくなっている人、本来はそうじゃないのに小さく感じさせられている人に対してのちゃい文々のまなざしは優しく、自然とセンサーが作動する。そしてそっと勇気づけ、寄り添い、言葉をかける。

タイトルの『あの日の唯一むにむに』が示す通り、本書はその時々でしか表現し得ない一瞬一瞬の輝きの集積であるとともに、ちゃい文々しか成し得ない生き様そのものでもある。今のちゃい文々だけにしか作り得ないこの本。恩返しではなく、恩送りの一冊が一人でも多くの人の心に灯りをともすこと願っています。

(木戸敦子)