昨年8月に詩文集『めぐり逢い』を上梓された加藤かよ様にお話をお聞きしました。
前作、詩集『はなごろも』(2013年発行)以降の詩、東日本大震災の復興支援を兼ねて始めた一人旅での詩、2年分の慰霊の旅の旅行記、エッセイなどで構成した詩文集『めぐり逢い』。
特攻で散華した若い魂の声を、自らの足で拾い集め詩に昇華しようとする加藤さま。詩のほかに、その役割を託されたと思えるような奮闘ぶりもつぶさに描かれた本書は、序文を「相田みつを美術館」館長の相田一人様が飾っています。
詩文集『めぐり逢い』をまとめようと思った経緯からおうかがいします
『はなごろも』を上梓してから、70歳までにもう一冊詩集を作りたいと思っていました。義父母の介護と見送りも終え、やっと少し自分のために時間が使えると思ったころでした。
平成30年に慰霊の旅をした際、鹿児島の万世特攻平和祈念館で見た、荒木幸雄伍長の遺影の瞳に何かを託されたと感じたのです。
旅の帰りにはアクシデントに遭ったにもかかわらず、数々の偶然と幸運が重なり救われました。そのとき「彼らに守られた」と思い、荒木幸雄伍長、ほがらか隊の事などを調べ始めました。
彼らは確かに生きていた。
その足跡と細やかなエピソードを探し出し、詩を作りたい、そして戦後75年の8月に平和への思いを込め出版したいと思いました。万世、知覧などへの旅行記と初めた書いたエッセイ。この本は私自身そのものだと思います。
※荒木幸雄伍長は群馬県桐生市出身の大日本帝国陸軍軍人、操縦士、陸軍特別攻撃隊第72振武隊員。
荒木を中心とする第72振武隊の若い隊員等は「ほがらか隊」を自称し「子犬を抱いた少年兵」の写真で知られる。
原稿をまとめる際に大変だったことはありますか
どの詩を入れるかでずいぶん悩みました。エッセイも書き始めるとつい長くなり、なかなか短く纏められませんでした。
特攻隊員や出撃までの様子など、資料によって記述の違いが分かると、なるべく正確なことが知りたいという思いが募りました。
そこで、第72隊の少年飛行兵と一緒に訓練した上野辰熊さん(93歳)に間違いがないか原稿を見ていただき、はっきりした日時が分からない時は辰熊さんと推測して書き入れました。
なんとしても特攻で散華した少年たちの詩を作りたい、という気持ちを抑えることができませんでした。
戦後生まれの私が作る詩を、想像だけのものにはしたくなかったのです。たった1行でも彼らのエピソードを入れたい。本人の手紙、日記、辞世などを探したい一心でご遺族にお手紙を差し上げ、ご縁が結ばれたご遺族の協力があったことも書き残したかったのです。
本という形になっていく際のお気持ちはいかがでしたか
1冊目の詩集『はなごろも』の時は、入力をお願いし、目次も新潟日報入選作を入選順に掲載したので、ただお任せしたようなものでした。
今回は目次などの構成も自分で考え、本の全体のイメージをつかむために、自分なりに入力したものを8回ほど印刷し、本のような形にもしてみました。
緊急事態宣言が出て8月の出版が危ぶまれたり、校正が進むうちに新たな事実が判ると付け加えたりしたため、エッセイの内容が少しずつ変わり、担当の菅さんにはご迷惑をおかけしました。読む人に理解していただきやすいように、写真を入れたのは正解だったと思います。
表紙とカバーの作成のために、コロナ禍の中、2度ほど喜怒哀楽書房さんへ寄せていただき、菅さんと吉田さんのパソコン画面を見ながら希望を伝えられたのは良かったです。
本来なら詩集とエッセイ集の2冊を作ればよかったのでしょうが、その余裕もなく、無理を承知で詩文集という形をとりました。色々大変でしたが、思い切って作ってよかったと思っています。
本の反響はいかがでしたか
すでに150冊ほどを友人知人、慰霊の旅でお世話になった方たちに差し上げました。40人ほどの方から感想をいただくことができました。
人、動物、物、そしてご縁、すべてにめぐり逢いがあり、私が表紙やカバーに込めた想いをわかってくださった方がいらしたことは大変うれしいことでした。
~以下感想より
・この本はかよさんそのものですね。
・手に取ったときカバーを見て、あなたの本だと思った。
・普通の主婦が真実を知りたいと、仕事を休んでまで九州へ行くその行動力と一途さに感動した。
・5月27日の加藤さんの出発日と第72振武隊の出撃日が同じだったということに、目に見えない糸が、加藤さんを引き寄せているとしか思えませんでした。
・若き特攻兵に熱い心を寄せて各地へ足を運ばれるエネルギーを全ページから感じます。
・タイトルになった『めぐり逢い』に、かよさんの今につながる様々な縁が凝縮されています。戦争で無残に散った命、彼らの行動を紐解く慰霊の旅。自らは命を繋ぐことができなかった『ほがらか隊』。尊い犠牲への感謝の一念と、平和への想い。無意識のうちに『心の相続』をしていると思った。
今、夢中になっていること
今年熟慮断行して、初めて万世特攻慰霊碑慰霊祭に行ってきました。他のところへも寄りたかったのですが断念。万世と知覧の祈念館だけにしたのですが、そこで新しい事実を証明するような手紙を見つけました。『めぐり逢い』出版後のことや、その後にご遺族と繋がったこと、そして今年の旅行のことを今書き留めています。
もう少し細やかなエピソードを探し出し、彼らの生きた証の詩を作りたいと思っています。
少年飛行兵15期甲の同期生たちが書かれた文章が見たいと思っているのですが、お持ちの方にめぐり逢っていません。いつか、ほがらか隊の詩文集を作ることが夢です。
詩文集『めぐり逢い』より
めぐり逢い
秋吉台の一本のヒルガオと秋色の風が
私を詩の世界へと誘った
傍らにいつも犬や猫の姿
心を癒し純粋な愛を貰った
講演会での凛とした姿と言の葉
初版本は買えなかったけれど
新潟と東京の雪が 私とあなた親子を繋いだ
小五の時のテレビ映像
画面から伝わる衝撃に
必ず千羽鶴を広島へ届けると誓った
子犬を抱きほほ笑む少年飛行兵
彼の遺影の瞳に何か託されたと感じ
七十四年の壁に隠れた真実を探す 旅に出た
恥ずかしがり屋であと一歩が踏み出せない私
あの時代に自分の意見をはっきり主張する
貴重な子だったと教えてくれた恩師
通信高校で知り会ったね
口喧嘩は絶えなかったけれど
お互い仕事頑張り 七人の孫授かったね
さまざまな 人 動物 自然 物 言の葉に
私は育まれ 今ここに生きている
詩文集『めぐり逢い』をご希望の方、他「ほがらか隊」に関する情報をお持ちの方は、以下にご連絡ください。
詩文集『めぐり逢い』ご希望の方は
メールアドレス kayo53-mago4@swan.ocn.ne.jp 加藤かよ様まで
¥2,000円+送料180円 合計2180円